介護保険改正をどうとらえるか?

 介護保険の改正で、かつて要支援あるいは要介護1だったかなりの人が、介護予防の方に移された。当然のことながら、現場では不満が出ている。

 私自身は、介護保険制度の設計時から、介護保険で給付するサービスは、プロにしかできない身体介護サービスに限定すべきで、アマであっても提供可能な生活援助や軽介護のサービスは、ボランティア・NPOなどによる共助によってカバーするのが筋だと考えていた。活力ある社会を築くには、自助・共助・公助の順を守ることが必要だと思うからである。

 これに対しては、女性団体から、家事をアマの仕事というのかとか、女性を家に縛るものだという批判を受けた。

 前の批判はともかく、後者については、たしかにボランティア・NPO活動や近隣の助け合いがまだ十分に普及していない日本の現状の下では、そのとおりだと思ったので、私は、介護保険の仕組みに賛成した。

 ただし、介護保険でカバーする生活援助は、生活の基本を支える家事などで本人が行うことのできないものに限定することが重要だと主張した。

 そうしないと、できることも人にやってもらうようになり、自立自助という基本精神に反する事態が起きるとおそれたからである。

 誰しも楽な方を選びがちなことから、自助自立の精神を保ち続けることは難しく、介護保険の利用が広がるにつれ、おそれていた依存傾向も広がってきた。

 そのため今回の改正が行われたのであるが、生活援助を一挙に廃止するというような急激な変化は避け、介護保険事業やこれを補う地域支援事業で生活援助サービスを行う場合には、本人のやれることはやってもらうという自立支援を徹底することとしている。

 しかし、自立の必要性を利用者に効果的に説くことができるのは、ボランティアである。行政のサービスに対しては、納税者として勝手な要求をすることがあるが、ボランティアには、それはできない。

 各地のふれあいボランティア団体は、介護保険制度の改正で従来のサービスを打ち切られた利用者(特定高齢者など)に対し、自助の困難な人に共助のサービスを提供するというボランティアの原点に立って、つまり、いつもやっているとおりに、生活援助活動を行ってほしい。

 そして、その活動が全国をカバーするよう、引き続き、さまざまな形で活動の普及に努めたいと思っている。(堀田力)

JanJan - 2007年2月10日