介護報酬改定前倒しを見送り

介護保険で介護報酬などを検討してきた厚生労働省の「社会保障審議会介護給付費分科会」は、今年10月から介護サービス事業の実態を把握するためにワーキングチームを編成し、関係団体からヒアリングを行いました。

介護事業のヘアリング調査報告によりますと、介護労働者の賃金水準は、全産業平均と単純に比較すれば低く、介護サービス事業の経営も厳しさを増していると報告しましたが、一方介護労働者の賃金には勤続年数や年齢、性別、就業形態といった要因があります。介護事業者の経営にはサービスの種類や事業規模などの違いがあると指摘しています。これらの問題を解決するためには、介護報酬の水準や事業に係る基準や規制の在り方、介護保険サービスの在り方とその範囲、事業市場の状況、事業のマネジメント、人事労務管理の在り方、介護労働者市場や他の労働市場の状況、サービス提供以外の事務負担などの、要因について充分な分析を行い幅広い観点からの施策を講じる必要があるとの考えを示しました。

介護報酬や介護事業の今後の検討課題として、介護報酬の水準と労働者の定着のための対応策やキャリアアップの取り組みに対する評価の仕方、書類の作成など負担の軽減させる規制の見直しや給与などの地域水準を適切に反映する仕組みの検討も指摘しました。訪問介護や通所介護系の事業は、質の確保のためにサービス提供責任者など人員の配置基準の在り方や報酬の評価を検討し、訪問介護の生活援助を保険サービスとしてすべて対応することや、介護保険内で決められたサービス時間に保険外の費用で上乗せできる契約ついても検討が必要としています。さらに、介護施設系の事業は、入所者の重度化を考慮した人員配置基準の在り方などの検討が必要としています。

介護事業のヘアリング調査報告を受けて厚生労働省は、2009年4月の介護報酬改定を1年前倒しする緊急措置を見送り、2008年4月に改定しない方向で合意しました。