団塊の世代/「第二の金の卵」です

 戦後生まれの団塊世代が今年から定年を迎え、二〇〇七年問題が始まる。人口減少時代に突入し、この世代が何を求め、政府や地方自治体、企業がどう対応するか、本格的な高齢社会への移行方法をどうするのか、日本社会の力量が問われる。

 これからの最大問題は人口問題だ。十五歳から六十四歳までの生産年齢人口は今後は毎年数十万人単位で減る。六十五歳以上の老齢人口は増え続け、五五年には総人口の40%を超える。労働人口が減り、日本は超高齢化社会になる。

 団塊の世代全員が七十五歳以上の後期高齢者となる二五年度には、要介護認定を受ける高齢者は〇六年度の一・七倍の七百八十万人と推計されている。六十五歳以上に占める要介護者の割合も18・4%から22・3%に上昇し、介護保険給付費は二・六倍の十七兆円に膨らむ見通しだ。

 数字だけ見ると、厳しい未来が待ち受けている。労働人口の減少は経済が停滞し、社会が衰退する恐れもある。年齢や性にかかわりない働き方が重視され、労働力の確保のため退職した団塊世代が期待されるのは無理もない。

 団塊世代については「体力があり元気で知的好奇心が旺盛、まだ終わっていない世代」などと特徴づけられている。東京都が昨年、この世代の人にアンケートしたところ、男性の八割が「五年後も働いていたい」と回答した。

 働き方も「正社員で」が三割、「嘱託・パートで」が四割だが、二割ぐらいは自営業開業やベンチャー経営者になりたいといい、半数は会社の肩書はなくてもいいと言い切っている。過去の経歴にとらわれない、さまざまな働き方を模索しているとみていい。

 政府や地方自治体は団塊世代を「社会的に有用な人材」としてとらえ、退職後も継続して産業振興、地域振興で活動してもらうべく行政として支援・誘導する政策を立て始めている。「第二の金の卵」というわけだ。

 この世代の多くは退職後、収入の柱を年金とし、足りない分を預貯金や働いて補おうと考えている。これまでのように妻子を養うため窮屈な「宮仕え」に耐えようとは思っていない。

 こうみてくると、悲観的な数字の推計と違い、楽観的な将来も展望できる。熟練した技術の継承は企業にとって大きな課題だ。起業の増加に伴って組織マネジメントの需要も増えてくる。さまざまなノウハウを身に付けている高齢者が活躍できる余地は多い。

 地域再生に貢献できる道もある。いじめなどの教育問題を見ても地域の力が弱くなっていることが背景にある。高齢者が生き生きと生活するにも地域の役割は大きい。会社を見ていた目を地域に向ければ、多くの発見があるはずだ。

 団塊世代約七百万人の半数は東京、名古屋、大阪の三大都市圏に住んでいる。各県の調査では二、三割は出身県へ戻りたいと希望しているという。多くの県は過疎に悩んでおり、ふるさとに貢献する方法は、きっとある。

 地方に生まれた若者は学問のため、仕事のため都市に出た。退職を間近に控えた今、ふるさととともに暮らす人生を見つけたいと思っている人は多いはずだ。

山陰中央新報 - 2007/1/11