高齢者虐待140件/法施行で表面化

 高齢者虐待防止法が施行された二〇〇六年四月から一年間に県内の市町村に寄せられた虐待に関する相談は三百五件で、うち虐待と判断したケースは百四十件に達することが、沖縄タイムス社の調べで十四日までに分かった。施設内での虐待三件が初めて確認された。法施行をきっかけに家庭や施設で隠されがちだったお年寄りへの人権侵害が表面化しつつある。

 介護関連施設であった虐待報告は「施設職員にたたかれた」などだった。警察の援助を受けた「立ち入り調査」を必要とする深刻な報告例はなかった。

 市町村別の相談件数は、百件を超す相談が寄せられた市がある一方、〇件が十七市町村に上るなど、相談態勢の違いなどによるとみられるばらつきがある。

 百五十九件と最も多く相談が寄せられた沖縄市では、介護支援センターや民生委員が中心となって虐待相談を積極的に掘り起こしている。市高齢福祉課は「数年前に相次いで発生した高齢者の孤独死を受け、福祉関係者や地域の連絡体制がすでに整備されていた。あらゆる相談が市に寄せられている」と説明する。

 全市町村とも虐待の「相談窓口」を設置済みだが、警察など関係機関と連携したネットワークづくりはまだ全体の取り組みが鈍い状況だ。

 ネットワークを「設置している」か「本年度中に設置予定」の自治体は全体の約四割にとどまっている。「検討中」が十市町村、「未定」が十四市町村だった。「未定」と答えた市町村の多くは、「現時点で虐待報告がなく、既存の介護保険関係者の連絡会議などで対応可能」とみている。

 法制化で虐待が顕在化したことを評価する琉球大学医学部の國吉緑准教授(成人・老年看護)は「虐待が起こってからではなく(相談しやすいなど)起こらない地域づくりが課題。虐待に対する市町村担当者の知識を深めるなど、スーパーバイザーとしての県の役割も重要」と指摘した。(黒島美奈子)

沖縄タイムス - 2007/4/15