災害時、要援護者一目瞭然 地図作製方法を官学共同開発

災害時の避難に支援が必要な「要援護者」がどの地域に集中しているか-を、地理情報システム(GIS)上で一覧できる「災害時要援護度マップ」の作り方を、立木茂雄・同志社大教授(社会学)のグループと神戸市が共同開発した。従来、要援護者は障害の程度や独居か否かが主な判断基準だったが、このマップでは、自宅の耐震性などの要素を加え、過去の災害調査も踏まえて、支援の必要性の度合いを数値化した。(石崎勝伸)

 災害時の要援護者については、独居高齢者や障害者を中心にリスト作りが進む。支援者の数に比べ要援護者数が膨大で、避難支援が難しい地域も多い。

 一方、老朽家屋の密集度や津波の想定浸水域を示すハザードマップ(災害予測地図)は多くの自治体が作っているが、地域の要援護者の有無は考慮されていないケースがほとんどという。

 立木教授らは、それぞれの要素を重ね合わせ、南海地震による津波で浸水が予測される神戸市東灘区南部をモデルにマップ作製を計画。介護保険サービスを利用する三百八十六人に協力を依頼し、百二十三人から要介護度をはじめ、同居家族や近所の家族の有無、自宅の築年数、構造などを聞き、GISに入力した。

 さらに各要素の重要度を探るため、昨年七月、水害に見舞われた長野県下諏訪町で、介護保険サービス利用者の避難を支援したケアマネジャー十八人から聞き取りした。避難支援の判断材料として、独居かどうかなどの社会的孤立度を優先したとの結果を数値化し、マップに反映させた。

 マップでは、要援護者が集中する地区を色分けし、神戸市東灘区魚崎南町の一部などが最も要援護度が高い赤色になった。

 立木教授は「自主防災組織などが把握した要援護者の情報を重ねれば、さらに精度が高まる」と指摘。「なぜ要援護度が高くなったのかを見ることで、具体的な防災、避難支援策が実現できる」と活用を提案している。

神戸新聞 - 2007/1/7