老老介護もできまっせ

 未知の世界と考えられていた高齢社会が到来し,そして介護保険制度がスタートして六年が経過した.高齢者人口は過去に例を見ない二千五百万人になろうとしている.特に介護が大変な認知症の方々は二百万人弱いるとも言われている.
 ぜひ,介護保険制度が,家族に介護疲れの出ないような仕組みに進化して欲しいものである.
 一方で,元気なお年寄りがたくさんおられる.「シルバー青年」と呼ばれるこれらの方々に対しては,介護保険対象外の「こころの癒し事業」を発足させ,“オシャベリヘルパー”として,介護の一翼を担って欲しいものである.
 平成十八年四月から,介護保険制度が一部改正されたが,その際に導入された予防給付については,その対象者を生活機能が維持・改善される可能性が高い人に限定している.しかし,例えば介護報酬で予防給付の判定をされた場合,継続して同様のサービスを受けることができないという声も聞かれる.また,訪問介護,通所介護,通所リハビリにおいては,月単位の定額制の報酬であるために,単位数が低く,必要なサービスが受けられない場合もあるという.地域包括支援センターの協力も得ながら,支援事業の周知徹底を図る必要があると考える.
 制度開始から五年目の,約束された改正であったが,制度を運営していくうえで,今後もいろいろな問題が出てくることだろう.その見直しの際には,家族も含めた要介護者の幸せを考えた仕組みと運営を行っていただきたい.また,同時に,広域的な運用も必要になってくるのではないだろうか.
 療養病床は,必ずしも医療サービスを必要としていない方も利用しているということから,「医療費の適正化のための方策」として,再編成が打ち出された.今後のさらなる高齢化の進展や,日本経済の現況を考えると,医療費の適正化は必要なことと思われるが,限られた医療資源を有効に活用していく工夫も重要である.介護療養型医療施設については,依然としてその果たす役割は大きいものがあると思う.
 療養病床の六年後の廃止が政策として示されているが,個々の地域のサービスに応じたケア体制の確立が先決であり,重要なことなのではないだろうか.また,老人保健施設への転換については,地方の意見を十分に汲み上げてから行って欲しい.

日医ニュース - 2007年1月4日